半月板損傷とは

若い時に、激しいスポーツを行っている最中に膝をケガした経験を持つ方も多いのではないでしょうか。その中で半月板損傷というケガを負った方もいるはずです。半月板損傷とは具体的にどのようなケガなのかを解説します。

半月板損傷の症状

半月板損傷には大きく分けて4つの症状があります。

  • キャッチング
  • ロッキング
  • 関節水腫
  • 膝周辺の痛み

ここからは4つの症状についてご紹介していきます。

キャッチング

キャッチングという症状は、「引っかかり感」と称されるもので、膝を伸ばす際にスムーズな動きではなく、少し引っかかったような違和感があります。膝の動きは滑らかではないものの、膝自体は動かせるため、放置されやすい症状です。

キャッチングが起きている状態は半月板が既に損傷しており、本来移動すべき方向とは違う方向へ動きやすく、若干動きが制限されているような状態です。

半月板が損傷すると安定性も損なわれ、様々なものの位置が多少ズレやすい傾向にあります。その状態で動かすと変な位置から動くことになるため、動きにスムーズさがなく、違和感を覚えます。これがキャッチングの症状です。

ロッキング

一方、ロッキングはその名の通り、膝が急にロックされたかのように動かせなくなってしまう状態です。別名「嵌頓状態」とも呼ばれ、半月板が損傷した状態は半月板が断裂した状態であり、この断裂した部分が関節の間に挟まってしまうのがロッキングです。

ロッキングは膝の屈伸運動の際に生じやすいとされています。そもそも膝の屈伸運動の際には、膝が動く中で連動するように半月板が前後に滑ることでスムーズに屈伸ができます。ところが、断裂が起きるとスムーズに滑ることができず、負荷がかかって断裂した部分が関節の隙間に挟まれることがあるのです。

膝の屈伸は日常的な動作でも生じやすく、階段の上り下りを始め、床から立ち上がったりしゃがんだりする際にも起こります。ロッキングには前兆があり、先ほどのキャッチングの症状があった場合、その発展形がロッキングになります。

万が一ロッキングした場合、整形外科に駆け込んで応急処置を受けることになるでしょう。一時的に解除できても半月板損傷の状況は変わらないので、再度ロッキングは起こります。本格的な治療をしないとロッキングとの恐怖と闘い続けることになりかねません。

関節水腫

半月板損傷の症状には関節水腫と呼ばれる症状もあります。分かりやすい表現では「膝に水がたまる状態」が関節水腫です。関節水腫は半月板損傷ならではの症状ではなく、膝関節ならではの症状と言えます。

そもそも関節には「関節包」があり、その関節包の中に「関節腔」と呼ばれる部位があります。この関節腔には関節液が入っており、関節液がスムーズな関節の動きにつなげたり、関節軟骨に対する栄養供給の役割を担っているのです。

半月板損傷などが生じると関節内に炎症が起こり、関節液が増えていきます。関節液は通常時多くても3cc程度しかありませんが、多くなると50cc以上にもなってしまうのです。

それでも増えた関節液は、古い関節液とトレードされるように回収されるのですが、何らかの理由でこの回収がうまくいかなくなり、関節液があふれかえります。この溢れかえった状態こそが関節水腫の状態です。

半月板損傷の場合、慢性化によって関節炎が起こりやすく、その結果、関節水腫が起こる状態です。半月板損傷における関節水腫は、半月板損傷の慢性化で見られる症状です。

膝周辺の痛み

半月板損傷はスポーツで起こりやすいとされています。その際、半月板だけを損傷するとは限らず、別の損傷を招いていることもあります。その代表例が前十字靱帯、内側側副靱帯の損傷です。

私たちの膝は4つの靭帯でつながっており、この靭帯によってグラグラすることなく普通に歩いたり、運動したりできます。前十字靱帯、内側側副靱帯は重要な存在であり、これがないと膝の安定性が失われてしまいます。

これらが損傷すると激しい痛みを感じやすく、関節が腫れやすくなります。損傷してもしばらくすれば歩けますが、膝は不安定なままで、膝が抜ける感じになる「膝崩れ」が起こりやすくなるのです。

半月板損傷の状態では前十字靱帯、内側側副靱帯なども損傷している可能性は高く、膝の周りが痛い状態ではこれらの損傷もあると考えるべきでしょう。

半月板損傷の形状

様々な症状がある半月板損傷ですが、半月板の損傷には様々な形状が見られます。

  • 縦断裂
  • 横断裂
  • 水平断裂
  • バケツ柄断裂
  • フラップ状断裂
  • 円盤状半月

ここからは上記6つの形状についてご紹介していきます。

縦断裂

縦断裂は半月板の縁を沿うように亀裂が走っている状態を指します。基本的に半月板の外側で起こりやすいのが特徴です。

半月板のおよそ3分の1に血管が走っており、その部分は自然治癒の可能性があるとされています。縦断裂が起こる部位は血管が走っていることが多いため、保存治療によって縦断裂の状態を見守っていくこともあります。

しかし、縦断裂の場合、後程ご紹介する「バケツ柄断裂」になりやすく、キャッチングやロッキングを誘発する危険もあるでしょう。そのため、ロッキングを何度も起こしている場合、縦断裂の部分を縫合する「縫合術」を使って手術を行うケースもあります。

横断裂

横断裂は半月板を横断するような形で亀裂が入っている状態です。内側から外側に向かって亀裂が入る形で、横断裂が悪化すると完全断裂につながってしまいます。

真っすぐ断裂していくケースもあれば、「半月板フラップ上断裂」として斜めに断裂していくこともあります。この状態でもロッキングが起こりやすく、場合によっては縦断裂が混じったような状態にもなるのです。

横断裂も縦断裂と同様比較的ありがちな断裂で、スポーツで激しい動きを急に行った際に生じやすいと言われています。また交通事故に巻き込まれ、関節に大きなダメージが加わることでも起こりやすくなります。

水平断裂

水平断裂は半月板が水平方向に断裂している状態を指します。真上から見ても断裂しているかわからないものの、横から見ると断裂は一目瞭然な状態になっています。

縦断裂や横断裂はスポーツを行う若者が経験しやすいケガの1つですが、水平断裂は年齢を重ねた中高年が発症しやすい症状です。ポイントになるのが半月板の組織です。半月板の組織が老化によって水分を失い、段々と弾力を失うことでクッション性が落ちていきます。

体重増加などで半月板にかかる圧力が増して、クッションとなる半月板にいよいよ限界が訪れます。一部分から亀裂が入り始め、それが水平方向に広がっていくのが水平断裂です。水平断裂が起こりやすいのは内側半月板で、徐々に亀裂が大きくなるのが特徴です。

若者の半月板損傷は1回の衝撃でも起こりますが、水平断裂は時間をかけて少しずつひどくなっていくため、同じ半月板損傷でも大きな違いと言えます。

バケツ柄断裂

バケツ柄断裂は縦断裂が酷くなり、まるでバケツの柄のように断裂している状態を指します。ロッキングの症状が起こりやすいのはバケツ柄断裂になっている状態で、バケツの柄の部分が相当不安定になっていることが要因です。

バケツの柄の端の部分が膝の内側に伸び、それが隙間にハマってしまい抜けられなくなります。ロッキングが起きた時点でバケツ柄断裂が起きている可能性が高いと言えるでしょう。

フラップ状断裂

フラップ状断裂は、断裂した先がフラップ状になっているものを指します。飛行機の翼についていて上下に動く板のようなものをフラップと言いますが、半月板損傷においてそのフラップのような状態になっているのがフラップ状断裂です。

内側半月板で起こりやすく横断裂から斜めに広がっていくことでフラップ状になっていきます。フラップ状になっており、比較的自由に動きやすく、それが激しい痛みなどにつながってしまうのです。

水平断裂と状況は似ていますが、痛みが出やすいのがフラップ状断裂で、発覚までの時間が早く、治療に取り掛かるのも早い傾向にあります。

円板状半月板断裂

本来半月板は三日月型になっていますが、外側半月板が円板のようになっているものを円板状半月板と言います。これまでの断裂は、激しい衝撃に耐えられないことや経年劣化などが原因でしたが、円板状半月板断裂に関しては先天的な異常が関係しています。

先天的な形態異常に伴い、円板状半月板になってしまい、特段力がかかっていない状態でも損傷しやすくなってしまいます。三日月型が一番力を逃がしにくい中で、円板状半月板は力が逃れにくくなるため、断裂が起こりやすくなるのです。

アジア系の人種で円板状半月板になりやすいとされ、アジア人がなりやすい症状の1つと言えます。

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